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第15話 味方の顔をした距離

Author: marimo
last update publish date: 2026-02-25 20:22:38

その男と再会したのは、あまりにも偶然を装った場所だった。

東亜リンクス商事本社ビル近くの、昼時には少し遅いカフェ。

「……綾乃?」

声をかけられ、顔を上げた瞬間、胸の奥が微かにざわついた。

「久しぶりだな」

柔らかく笑うその顔を、綾乃は忘れていなかった。

神崎 和真(かんざき かずま)三十三歳。

神崎財閥の御曹司で、現在は関連投資会社の専務。

そして――

幼い頃から、同じ世界で育った男。

「……驚いたわ。こんなところで」

「本当は、連絡しようか迷ってた」

そう言って、和真は向かいの席に腰を下ろした。

(迷ってた、ね)

昔から、彼はいつもそう言う。

距離を測るように、一歩だけ近づいて、相手が拒まなければ、もう一歩。

「最近、大変そうだな」

和真は、そう切り出した。

「週刊誌も、業界も、君の話題で持ちきりだ」

「……心配してくれてるの?」

綾乃がそう言うと、和真は少し困ったように笑った。

「当たり前だろ」

その言葉は、昔と何も変わらなかった。

「君が不正をする人間じゃないことくらい、俺は知ってるよ」

綾乃は、カップに視線を落とす。

(“知ってる”……か)

それは、玲司が使わない言葉だった
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